きいろいちゅーりっぷ

日々の細々を書きます。

イメージの中のハート

マッチングアプリに登録したのは、恋人の心が離れていることに気付いたからでした。何か月も時間をともにして、手をつないでキスをして、それでも明確な言葉はくれない彼に「好きだ」と告げた次の日、連絡の頻度ががくんと落ちました。

恋愛特有の寂しさを感じ、でも心のどこかで「やっぱりな」と思っていました。

泣くに泣けない日々を過ごし、彼の時間の持ち方を受け入れようとも思ったけれど、こうも付き合う前と後で対応が違うと、「あれ?わたし、別な人に告白しちゃったのかしら」と思い始めます。好きだし、触れられていたいとも思ったのに、こうなってみると、本当は私自身、彼のことを好きではなかったのかもしれないとさえ、考えてしまうのです。

とはいえ、写真をスクロールして2人で撮ったものを見返せば、確かにそこには互いに好きだという感覚があったように感じます。なにか悲しい気持ちになりますが、じゃあ出会いたてのころに戻りたいか、と言われればそうではないのです。それには彼を知り過ぎてしまいました。私にくれた優しさは、彼の無意識の部分で見返りを求めた行為だったのだと知ってしまったし、彼が本当に求めていた関係は私とじゃ、作れないことも分かってしまったのです。

 

アプリの写真はおざなりに選びました。ベッドに仰向けに寝た姿勢で撮った、笑顔の写真。1か月もしないだろうと思ったので、それまで避けていた顔写真を載せたのです。プロフィール欄はほぼ空白。なんて投げやりなんだろうと笑ってしまうほどでした。

 

案の定、「いいね」をしてくれた男性たちはみな一様に真剣な出会いなど求めていないようでした。一見、真面目そうで人気でもなさそうな男性も、やりとりをしてみれば同じでした。初めはこんなにさばけるかなと不安になるほどの人数も、「明日泊まりに来れる?」だの「ライン教えて」だので、気がつけば一人になりました。

 

でも、この最後に残った一人も「ライン教えて」だったし、連投してくるしで実際、いいねと返していても「いいね」とは思わない人でした。その時の私はとても投げやりだったし、寂しささえ文面で埋まれば全員どうでもよかったんです。だってどうせ、恋人とは別れているようなものだったから。

だから、会おうってなったときも本当はどうでもいいやと思ってたんです。1人しか残っていないし、会ってしまえば、この沈んだ気持ちも変わるかもしれないと。相手のことを恋愛感情では見ていませんでした。

 

だけど当日、なぜか今までにないほど緊張していました。恋人とだってここまで緊張したことはなかったし、言ったら面接に行くくらいの緊張感でした。今回は顔も互いに知っているから、緊張することもないはずなのに。

だからでしょうか。初めて目を合わせたときのこと、いまでも鮮明に覚えています。

店内に待っている彼に、すこし遅れそうとラインして走って行って、扉を開ける前に前髪を直しました。すぐにこの人だって分かると、相手も顔を上げ、目が合いました。会釈して「初めまして」と伝えると、彼もそうしました。

 

(私の中のアプリ初対面あるあるなのですが、全員会った瞬間、その場から逃れるように場所移動します。これ何でですかね?他の人に見られたくないから?私の中の謎です。)

 

彼はそんなことはなく、2・3言話すと「じゃあ、向かいましょうか」と歩み始めました。互いに緊張していることが分かりました。

 

こうして出会ったのが以前にも書いた「海の味」について話し合った方でした。

あの後、2回遊びに行って、3回目で告白してくれました。告白されることは彼の言動から分かっていたので悩みましたが、いざ3回目を過ごしてみると、なんのためらいもなく受けていました。

 

たくさん書きたいことはあるけれど、詳細は省きます。

嬉しい言葉をくれたのでそちらを記録します。まず告白で「最初に見たときから好きだった」「この人しかいない」「付き合ってください」とはっきり口にしてくれました。言葉にする勇気って年々重たくなっていきますよね。それをこんな風に緊張しながら、言ってくれる姿に感動しました。付き合うとなってからも、「色々なところに行きたいね」「これから大変なことがあっても2人で乗り越えていこう」「幸せって叫びたい」と言ってくれ、帰りの車中でも「幸せだ」と笑顔でした。

 

それを見た私ももちろん、幸せな気分になり、「幸せだねえ」と答えていました。

2人ともお気に入りの曲が一緒なので、合唱したりして、そのうちに1回目のデートのことになりました。

「海の味について話ができたときに、おお!って思ったよ」と言うと、

「あのとき、ふと横を見たら、白さんの横顔が夕陽を受けていて、忘れられないくらいきれいだなって思った」と言ってくれました。

 

小さなときから、頭の中にある私の心のイメージって、そのままハート形をしていて、つらい時や心がけば立った時、そのハートを優しくなでたり、包み込んだりを頭の中で描いて落ち着いていたんです。でもそれは本当に小さなときだけでした。

 

でもこの言葉をくれたとき、ふとこの頭の中のハートがくすぐられるようなイメージが湧きました。すごく久しぶりの感覚で、懐かしさまでありました。小さい頃に褒められてくすぐったいような気持ち。

 

帰ってからも、何度も何度も彼からの言葉を心の中で反芻していました。私はこの言葉をもらえただけで満足だなと思ったし、こんな風に私を好きになってくれる人がいるんだという暖かい気持ちになりました。

 

文章がつたないせいで、うまく残せていないけれど、いつかこれを読み返した自分が、その時たとえ一人でもほんのり暖かい気持ちになれるんではないか、と思います。

こんな気持ちをくれた彼に感謝します。